第19章 夏合宿(後半)
「夢野からの差し入れだ」
「マジっすか!夢野サンキュー!ありがてーなぁ、ありがてーよお」
「部長が買ってくれたの。お礼なら部長に言ってあげてください」
食べ物を前に喜ぶ桃城とリョーマ。元気を取り戻した様子に微笑んで萌は補足した。
「何だぁ、部長も買いに行ってくれてたんスね。ありがとうございます!」
「どもっス」
「今日はこの後皆に集まってもらう。遅れないように適当に切り上げろ」
そう言い残し手塚は去っていった。言葉の感じからして、罰に関しては形式上のもので、それほどこだわっている訳ではなさそうだ。彼なりの優しさに、萌達は三人で顔を見合わせて小さく笑い合った。
ミーティング後は皆で広場へ出て花火をした。皆それぞれに好きなものを持ち、夜の闇にかざして綺麗な色を楽しんだ。
「ぅわっ」
小さな叫び声がして見ると、途中で花火の火種を落とした菊丸がしょんぼりしている。
「俺さ~線香花火苦手なんだよね、すぐ落としちゃう」
「あたしもあまり得意じゃないけど…」
試してみようと一つもらってきてその場にしゃがみ込み、慎重に火を点ける。
「夢野の花火、一緒に見てていい?」
菊丸もしゃがみ込み隣から顔をのぞかせてきた。
「キレイだにゃ~」
かなり接近していた気がするが、夜の暗闇に紛れてさほど距離は感じられなかった。最後までじっと、短い火が終わるのを二人で見守った。
合宿は大変だったけど、何とか乗り越えられた。
次は関東大会だ。菊丸先輩と少しでも長く一緒にプレー出来るように頑張ろう。
今はそれが、あたしの全てだから…
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