第19章 夏合宿(後半)
何とも気まずい空気になってしまい、自分のせいだと責任を感じた萌。さっきはばたばたしていて話せなかった理由を説明し謝った。
「それで風呂場にいたのか…」
「それは仕方ないんじゃないかな。夢野は忙しいなか夕飯の支度までしてくれてるんだし」
すかさず不二が、萌には正当性があるとしてフォローしてくれた。それに同意しながら大石が付け加える。
「入る前に、もう少し確認してくれれば良かったんだがな」
「はい、それはまあ…その通りっス…」
正論で返され桃城は勢いを失って肩を落とし反省した。リョーマも箸を止め、もっと早く気付いていればと悔やんでいるようだった。萌からしたら、桃城達のほうが被害者のように感じられ申し訳なく思った。
「桃は、ちゃんと夢野に謝ったの?経緯はどうあれ、見ちゃったんだろ?」
そこへ菊丸が純粋な疑問を浴びせてきた。
「え!見ちゃったって…そ、そんなばっちり見たワケじゃ…」
「ばっちりかどうかじゃなくて、さ」
菊丸の問いに桃城は真っ赤になってもごもごと口ごもっている。
「赤くなるってことは…」
「うわー!ち、違うっス!思い出してなんかな…」
「桃!静かにしろ!」
何を言っても結局怒られてしまう桃城。この騒ぎで、罰として手塚からトレーニングを言い渡された二人は、夕食後の自由時間を潰す羽目になっていた。
不憫に思った萌はせめて彼らに差し入れしようと考えた。しかし合宿は今日が最終日、食料は全て使い切ってしまっている。
そこで手塚のもとへ、桃城とリョーマのために買い物に行く許可をもらいに赴いた。
「…行くなら今すぐ行って来い。夕食後の外出は基本的に禁止だ。来葉以外の誰かを連れて行け」
事情を伝えるとそう指示され、すぐに男子部員を探したが皆早々と風呂に行ってしまっているようだった。
こうなったら大石に頼もうと先程の部屋へ引き返す。ノックをして室内を伺うが大石もいない。
「どうした?」
ジャージ姿のまま机に向かいペンを走らせていた手塚が振り向く。