第19章 夏合宿(後半)
翌日の合宿最終日、この日はちょっとしたハプニングが起きた。
夕食の支度中、萌は誤って醤油を派手にこぼしてしまった。足にまでかかってしまい、夕食を作り終えた後に汚れを落とそうと風呂場へ向かった。まだ皆は練習中だ。ついでにそのまま入浴していた。
一方脱衣所のほうでは、桃城とリョーマが練習で汗をかき過ぎて、夕飯の前に汗を流しに来てしまっていた。
「おら越前、早く来いよ」
「桃先輩、待った…っ」
腰にタオルを巻いた格好で風呂場の戸を開けようとする桃城に、脱衣所の一角に服が置かれているのに気付いたリョーマが声を上げたが、間に合わなかったようだ。
「きゃあああっ!」
「へっ?」
萌が湯船に浸かっている場面に遭遇し、桃城は目をきょとんとさせている。
「ぅ…わああぁあ!なな、なんで…っ」
「だから言ったのに…」
数秒遅れてようやく事態を把握し慌て始めた桃城に、その反応で状況を理解したリョーマが後ろからため息をついた。
「どうした?何があったんだ!?」
萌がびっくりして叫んでしまっていたため、その悲鳴を聞いて大石がすっ飛んで来る。
「うわ、やばっ…か、隠れろ越前!」
「無理っスよ、そんな急に…」
なす術なくおろおろする桃城達の前に大石が到着した。
「お前達…これはどういう状況だ!?」
夕食の時間は、先程のお風呂事件の話題で持ちきりとなっていた。
「後輩の風呂を覗くなんて最低だな」
「あんだと!?つーか覗いてねえし!」
食事をしながらぼそっと侮蔑の言葉を浴びせる海堂に食ってかかる桃城。だが食卓を囲んだ一同に疑惑の目を向けられ、彼はたじろぎつつも弁解を始めた。
「だ…だから!事故っスよ、事故!なあ越前?」
「俺は覗いてないから。脱衣所にいただけっスよ」
「なにぃ、お前言い逃れする気かあ!?」
隣で他人事のように言い食事を続けるリョーマに、桃城は立ち上がって怒り出す。その様子に大石がすぐさま声を上げた。
「よさないかお前達!食事中だぞ」
「ごめんなさい…元はと言えばあたしがお醤油をこぼしてしまって…」