第16章 ストリートテニス
鳳に誉められ、萌は内心とても嬉しくなった。お礼を言って公園で解散となり、皆と別れて菊丸と帰路につく。先程の試合で彼と呼吸を合わせてプレー出来たので気分は爽快だった。
「そういえばさ、もうすぐ合宿が始まるにゃ~」
「はい。楽しみですよね」
そろそろ夏のビッグイベント、関東大会に向けての夏合宿が迫ってきていた。萌にとっては初めての皆との合宿だ、期待と緊張で今からドキドキしてしまう。
楽しみにしている萌の様子を微笑ましそうに見つめながらも、菊丸が忘れずに合宿の苛酷さも伝えてきた。
「言っとくけど、すっごくキツいんだぞ~!」
「菊丸先輩が一緒なら平気です!」
菊丸の明るいノリにつられて、深く考えずに萌は思ったままを元気に言い放った。すると彼は一瞬言葉を詰まらせた後、みるみるうちに頬を赤くした。
「お前…可愛いこと言うなよな~…」
視線を逸らし困ったようにぼそぼそと小さく呟く。
え……可愛いなんて初めて言われた気がする…
菊丸のその台詞に何だか妙に恥ずかしくなった。さっきの発言は正直な気持ちだったが、冷静に考えると恥ずかしい内容だったかもしれない。
菊丸といると、自然と素直な感情表現をしてしまう。無理にではなく、自分に正直になれる。それはきっと、彼の裏表のない純粋でまっすぐな態度のお陰だ。
自然体でいられるって、すごい事だよね。菊丸先輩に感謝しなきゃ…
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