第16章 ストリートテニス
少しも動じず、爽やかに笑みを向けてくる鳳に返す言葉も見つからない。
よ…よくもそんな事をさらりと言ってのけるなぁ。
しかしこの状況はまた誰かに見られたらまずいのでは…と思っていた矢先、ついに青学メンバーと遭遇してしまった。
「…ん?あれは夢野か?」
「あーっ、夢野!偶然じゃん!」
うそーー、しかも菊丸先輩…!と、乾先輩…ああ終わった…
菊丸と乾が通りの少し先からこちらへやって来た。早速菊丸にいぶかしげな視線をよこされる。
「ここで何してんの?てか誰この人」
「前に会っただろう?氷帝の…」
「2年、鳳です」
「なんで氷帝と一緒にいるの~」
少し拗ねたように問い詰めてくる菊丸を前に、萌は自分の潔白を訴えた。
「あたしは杏ちゃんと買い物に来ただけなのに…」
鳳と共にこれまでの経緯をざっと説明する。
「ふむ、そうか。他校のオフ時のデータ、ばっちり取れた…」
「じゃなくて!もう~乾のおバカ~」
観点も論点もずれている乾にすかさず突っ込む菊丸。そこへ見かねた鳳が楽しそうな提案をした。
「じゃあ四人揃ったところで、少し打ちませんか?」
ストリートテニス場へと向かう途中、乾は更なるデータを取るべく鳳に質問しまくっている。そんな中、菊丸が近付いてきてこっそりと小声で話し掛けてきた。
「夢野」
「はい?」
「もしグーパーになったら、グー出し続けてにゃ」
公園に到着すると、予想通りグーパーでペアを分ける流れになる。
「よぉし、決まったね!夢野よろしくにゃ~」
「あー…萌ちゃんと分かれちゃった」
残念そうな鳳と対照的に満面の笑みの菊丸。作戦勝ちである。
そうして、鳳にラケットを借りてコートに入る。気乗りしていない様子の相手にコンビ技を容赦なく叩きつけ、ついには圧勝してしまった。
「ぶい!」
「やった!」
ハイタッチで試合を締めくくる。こういった勝ち負けでなく、楽しむための試合も面白い。
「萌ちゃんて、やっぱり上手いんだね。何だか…以前見た時より上手くなってるよ」