• テキストサイズ

sweet and sour time

第2章 反省会


 少し安心感を持ちながら試合に臨んだ萌だったが、ゲームが進むにつれてだんだんそれは失望感に変わっていく。
 …なんで?もうボロボロじゃん…
 菊丸は攻撃型のサーブ&ボレーヤー、アクロバティックプレイで自由に動いて相手を翻弄するプレイスタイルの持ち主である。萌はと言えば、ダブルス経験のほとんどないシングルスの選手であった。個性的な菊丸をシングルスプレイヤーがフォローするのは難しい。二人の個々の動きが合わず、萌達は大石・海堂ペアに惨敗する。

「う~~ん、これは…」
「苦々しい結果になっちゃったかな?」

 そばで見学していた河村や不二も顔を見合わせる。
 試合中、菊丸がイライラしているのが分かってしまっていたので、終わった後何を言われるかと気が気ではなく萌は俯いていた。

「夢野」

 近寄ってきたシューズの先が視界に入り意を決して上を向く。

「は…はい」
「今日部活終わったらさあ、ちっと俺に付き合って。連れてくとこあるからさあ」

 普段明るい菊丸に真顔で呼びつけられ萌は言葉を無くした。
 や、やばいよお、何言われるんだろ…
 部活終了後、部室の外で待っているとほどなく菊丸が現れる。

「ほいじゃあ行くかー」
「エージ、どこか行くのか?」

 こちらに気付き声を掛けてきた大石に菊丸は笑って答える。

「あ、大石。ちょっと例の場所借りるよん」

 学校を出て黙ったまま歩き出す菊丸に萌はおずおずと話し掛けた。

「菊丸先輩…あの、どこ行くんですか?」
「ん?それはヒ・ミ・ツ。黙ってついて来なっ」

 しばらくすると大きくカーブした見晴らしのよい道にでる。学校からもそう離れていないその小高い道の脇にある大きめの古ぼけたコンテナの前で彼は振り返った。

「よおし、到着~!ここでこれから反省会するからなっ」

 言うなりひらりとコンテナに登ってしまう菊丸。

「おいってば~、早く来いよ~」
「え、来いと言われても…」

 制服に着替えている今、この格好で足場もろくにないような所をよじ登るのには抵抗がある。














/ 67ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp