第2章 反省会
ミクスドの練習が始まって一週間が経った。ようやく部にも慣れてきた萌は、いつもより早くコートに着いてしまっていた。コート内にはまだ1・2年が何人かいるだけである。そこへ部室から一人レギュラージャージ姿の人物が現れた。
…あ、越前くんだ。
「…お疲れさま」
「……ども」
目の前を歩いてきたので声を掛けると、相変わらず無愛想な一言を返される。しかしリョーマは萌を通り過ぎた先で振り返った。
「ねえ」
唐突に振り向かれびくっとする萌。リョーマは構わず続けた。
「ちょっと俺と打たない?」
「え?」
「…一緒にアップやろうって言ってんの」
リョーマのペースにややのまれつつも萌はコートに入り彼と打ち始める。リョーマはどこへ打っても綺麗なフォームで返してくる。しかもコントロールは自由自在のようだ。意外にも萌に合わせて打ち返してくれていた。
「越前くんて…フォームすごくきれいだね。打球するどいし」
「…『リョーマ』でいいよ」
リョーマは帽子を被り直しながら予想外な返事をしてきた。
「越前って言うのめんどくさいでしょ。けど、アンタもけっこう良い球打つじゃん」
…口数が少ないだけで、実はいい人なのかも。
「リョーマくん、またアップの相手してね」
「…いいよ、別に」
テニス部に入って初めてリョーマと会話らしい会話が出来て萌は嬉しくなった。無愛想に感じたのは彼のクールな性格によるものだろう。いざ話してみると思ったより接しやすい。明るい気持ちでその日の練習が進んでいった。
ミクスドの選手に選ばれた萌達は、竜崎先生にダブルスの練習試合のメニューを組まされていた。実力を測るため、そしてペアの相性や立ち回り方を見るためのものだ。
「よろしくなー、夢野」
「あ、よろしくお願いします」
菊丸がコートに入ってくる。初めてレギュラーの先輩とちゃんとペアを組んでワンセットマッチをやることになった。
菊丸先輩と、か……この人って確か黄金ペアのダブルス得意な人だっけ。