第14章 ペア復活
都大会も一週間後に迫りますます気合いが入る部活動。
ミクスドペア同士の練習試合は瑠羽の体調を考慮してずっとなかったものの、萌はこのところ心身共に良い調子を保てていた。だがそれも竜崎先生からの突然の発表により、少なからず崩されることになる。
「ミクスドのペアに変更が出ることになった。まずミクスド2、不二と来葉!そしてミクスド1、菊丸と夢野だ!都大会では基本的にミクスド1が試合に出場しもう片方は補欠となるが、しっかりやって欲しい」
え…今頃変更?都大会まで一週間もないのに…
先生の発表内容が上手く呑み込めず動揺する萌。不二がいつか言っていたことが現実になった。素直に喜んでいいのか分からない。
…もしかして、瑠羽先輩の体調が戻ってないのかも……不二先輩は知ってたの?変更になることを…
解散後もしばらく呆然と立ち尽くしていた萌の元に、菊丸がやって来た。
「またよろしくにゃ、夢野」
「よろしくお願いします…」
嬉しいのに、喜びたいのに、不二や瑠羽のことを思うと複雑でそれ以上何も言えずに見つめていると、菊丸も同じ思いなのか黙って微笑みすぐに離れていった。
何となく重たい空気のなか練習をこなし、向かった水飲み場で不二と出くわす。練習中はなるべく避けていたが、こんなにばっちり顔を合わせてしまうと無言でいるのもおかしい。
「不二先輩…あの、ペアのこと…」
やや口ごもり気味の萌だったが、彼は察したようでいつもの微笑みを浮かべて言った。
「うん…良かったね。ミクスド1昇格おめでとう」
「…瑠羽先輩の具合、治ってないんですか…?」
黙ってこちらを見つめていた不二は間をおいて振り切るように言った。
「瑠羽は大丈夫。キミは自分のすべき事に集中したほうがいいね」
少し冷たく突っぱねられて、それ以上は何も聞けなかった。彼は萌に試合に集中して欲しいのだろう。それが不二の優しさなのだということはもう分かっていた。
都大会まで残された時間は僅かだ。その日は部活終了後に菊丸と話し合うことになった。