• テキストサイズ

sweet and sour time

第13章 返事


 午後、部活の時間になりコートに赴いた萌は辺りがざわついているのに気付く。見るとウエア姿の瑠羽が声を掛けてくる皆に応対していた。

「瑠羽先ぱいっ、大丈夫なんですか?」
「うん。心配かけてごめんね、萌ちゃん」

 萌も制服のまますぐに駆け寄ると、彼女はにっこりと笑ってくれた。ほっと胸をなで下ろす。
 …よかった、何とか都大会に間に合いそう。
 ウエアに着替えて部室から出ると、不二と瑠羽が一緒に準備運動をしている光景が目に入り、萌は一瞬立ち止まる。そのまま二人はアップをするためコートへ入っていった。
 …不二先輩は優しいから……けど何となく複雑だな…

「おーす。…あっ、瑠羽ちゃん来てるじゃーん!よかったあ!」
「ホントだ。もう体調は大丈夫なのかな」

 コートにいる瑠羽を見やる菊丸と大石に続いて手塚も現れた。
 早速練習が始まったが、手塚からの指示で瑠羽は今日はほとんど打たなかった。復帰したばかりの本調子ではない状態では無理もないだろう。
 逆に萌は他メンバーとの充実したダブルス練習で、良いコンディションに持っていくことが出来ていた。



 あの公園での一件以来クラブに行っていなかったので、不二は帰ってしまうだろうと思い、部活が終わって萌は帰り支度を済ませ部室を出る。
 と、その先で不二と瑠羽が二人で話しているところにばったり出くわしてしまった。ただ挨拶をして行けばいいだけなのに、何故か萌はそれが出来ずにいた。少しの沈黙のあと、瑠羽が唐突に明るい声を出す。

「じゃあね。周、萌ちゃん、お疲れさまぁ」

 笑顔で一人去っていく瑠羽を頭の整理が追いつかずに見送ると、不二が静かに口を開いた。

「夢野…この間はごめん」

 明らかに自分に遠慮して行ってしまった瑠羽のことが気になりつつも萌は尋ねた。

「この間って…?」
「……急に抱きしめたりしてごめん」
















/ 67ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp