第12章 ファミレス
そして両手を頭の後ろで組むと空を見上げて付け足した。
「うらやましーんだよね、夢野達がさ」
その言葉に鼓動が早くなるのを感じていると、菊丸はからからっと笑った。
「…にゃはは、なーんてちょっとシンミリしちった。メンゴメンゴ!」
「でも菊丸先輩なら…誰と組んでも大丈夫ですよ。先輩のダブルスの動きって本当にすごいし」
彼のプレーを思い浮かべながら言う萌に、菊丸はにこっと、いつもより大人っぽく笑いかけた。
「俺…夢野と、も一回組んでみたいな」
その仕草にドキッとして思わず目が離せず見つめてしまう。彼はそれに気付いて少し慌てて前を向いた。
「あ、いやさ、前のときボロ負けしたじゃんかー。なんかくやしーしぃ」
…あれ?今ちょっとごまかした?
菊丸のそのにごしたニュアンスが気になって少しだけ期待したが、そんな想いを打ち砕くひと言が耳に入ってくる。
「…ま、お前には不二がいるもんな。そーだそーだ」
その言葉は萌の胸に深く突き刺さってきた。彼は未だに萌と不二の仲を誤解しているのだ。
菊丸と組みたいと思っていた都合のいい自分を反省する。彼の前で笑顔を作る家までの時間が長く感じられた。
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