第12章 ファミレス
「けどよ、さっきのファミレスの奴って氷帝だろ?なんで知ってんだ?夢野」
「…桃城先輩に教えてもらった公園のコートで会ったんです。他にも氷帝のキザ男たちいっぱいいましたよ」
低めのトーンで答える萌に桃城は少し気を遣い始める。
「そ…そっか。何かあったらすぐ呼べよ、奴ら案外タチ悪いからな」
「…もう遅いかも。軽くケンカしちゃった氷帝と。ダブルスの試合とかして」
「ケンカ!?」
「ダブルスぅ!?」
「誰とやったんだ?」
萌は皆に日曜日のことを簡単に説明した。乾はデータが取れて嬉しそうであったが、桃城は跡部に対し怒りをあらわにする。
「あーいつまだ橘妹にちょっかい出してたんかよ」
「氷帝ねえ、俺あそこキラーい」
「都大会で当たるかもな。強敵だぞ」
「えーっと、乾先輩電車でしたっけ?俺はこっちだから…夢野、送ってこうか?」
駅に近付いたところで桃城がそう言うと、それを菊丸が制した。
「あ、いーよ桃。俺が夢野誘ったから帰りも俺が送る」
そうして駅付近で解散し、菊丸と並んで帰り道を歩く萌。先程までとは打って変わって黙ったままおとなしく歩く彼が気になり、そっと話しかけてみる。
「先輩…都大会の時って今のペア変わっちゃうんですか?」
「どーだろ…そんなにぽんぽん変わるもんでもないと思うけどダブルスのペアって。でもこのまま瑠羽ちゃんが出れなかったら変更せざるを得ないにゃー」
菊丸は普段通りの調子で答えてくれた。ペアは瑠羽の体調次第ということだろうか。それならばどういう形になろうとも仕方の無いことだ。
「…なんで?なんか今のペア問題アリ?」
萌の質問の意図が気になったのか、逆にそう返された。
「いえ、そんなことは…」
「そ~だよな~お前絶好調だもんな~…実はさ、俺今のペアちょっちやりづらいんだ」
珍しく自分自身の悩みを打ち明けてくる菊丸。
「まー俺と合う奴ってなかなかいないけどさ、俺けっこう勝手に動いちゃうから。なんつーか…瑠羽ちゃんもムリに俺に合わせようとしてペース崩しちゃうんだ。お互いのフォローが、フォローになんなくって」