第12章 ファミレス
鼻歌混じりで席につく菊丸。隣に萌が座り、向かいに桃城、その横が乾となった。例によってドリンクバーで乾杯する。
「ねーねー夢野ってさあ、不二と付き合ってんの?」
「ぶ」
開口一番、核心をついてきた菊丸の質問に萌は吹き出しそうになった。
「ま・さ・か」
「でもだって今日さー、ねー?」
「ああ、そうだな。不二が怒る姿というのはそうそう見られない。今日はいいデータが取れた」
菊丸に促され乾も同調する。
「何かやらかしたのかあ?ケンカでもしたか?」
「ちがう~~っ、違います!」
その流れにのる桃城にも否定すると、菊丸がしみじみ呟いた。
「…でもあの不二が女子に怒鳴るなんてなあ。俺初めて見た」
「いいじゃないか夢野、部内の恋愛は別に禁止という訳じゃない。しかもお前達はペアを組んでるんだし、連携プレーの成功率は飛躍的にアップするぞ」
皆口々に勝手なことを言ってパフェやフライドポテトなどをつまんでいたところだった。通路側に座っていた萌に、ドリンクバーのカップを持った長身の男子がいきなり話しかけてきた。
「あれ?この間の…萌ちゃんだっけ?」
この制服って…もしかして…
視線を上げ彼の服装を見て記憶を巡らせる。
「氷帝学園の…?」
「2年、鳳だよ。覚えてないか。あの時は悪かったね、ウチの先輩達すぐ悪ノリするから」
彼はすぐに自己紹介をして、公園での騒動を謝罪した。
「いえ…平気です」
「…ていうか、君って青学だったんだ」
萌の制服や周りの青学メンバーをちらっと見て鳳はさわやかに続ける。
「この前さ、青学の不二さんと青春台通り歩いてたでしょ?制服が違うなあと思ったんだ。デートだったの?」
一瞬辺りは静寂に包まれる。萌は目の前が真っ暗になるような気分を覚えた。
この人…タイミング最悪過ぎる…
「じゃ、またね萌ちゃん」
鳳が去っていった後、青学メンバーに疑惑の目を向けられたのは言うまでもない。あんな証言をされては弁解もむなしく、萌はすっきりしない気持ちで帰り道を皆のあとから歩いていた。