第10章 氷帝学園
そこにはいつの間にか、氷帝学園のジャージを着た跡部率いる氷帝軍団が六人ほど集結していた。
「ど…どこから!?」
杏はプルプルと腕を震わせながら跡部に唐突に質問する。
「あ?」
「どこから聞いてた!?今の話」
「…『やだー萌ってばやるじゃない』からだ」
あまり興味なさそうに跡部はぼそっと答えた。血の気の引く思いで先程の会話を頭の中でおさらいする萌。どうやら何とかセーフらしい。と、その直後に忍足が横から口をはさんできた。
「…実は俺は『うっそおー告白されたの』から聞こえてたんやけどな」
その言葉に萌達に衝撃が走る。
そ…それってアウトじゃん!!
「誰が誰に告白されたって?」
途端に鋭い眼光をこちらに向けてくる跡部。
「そう心配するなって跡部。どうやらそっちの子が告られたらしいわ」
ニヤニヤしながら忍足は顎で萌のほうを指した。
「アンタも不動峰か?へえ…けっこうカワイイ子おるんやな。青学の不二もええとこ目つけてくるやないか」
皆に知らせるようにわざとらしい言い回しをする忍足に萌はムッとする。その忍足の言葉に跡部と向日も乗ってきた。
「青学の不二?フン…それはそれは」
「青学なんかよりオレらのほうが断然いいぜえ?女のコたちぃー」
「ちょっと…!そんなこと他の所で言いふらさないでよね!」
杏が迷惑そうに言うと向日に反論される。
「でけー声で話してたのはそっちだぜぇ」
「だからってそんな言い方ないんじゃない?」
「じゃ、どうして欲しいんだ?」
二人の口論を止めるように跡部が割り込んだ。
「…萌に謝って。今聞いたことは忘れる、他の人に言わないって誓ってよ」
杏の答えに跡部は面白くなってきたとばかりに薄く笑った。
「…タダじゃそれは出来ねえな。忍足、どうする?」
「せやなあ…一丁、ゲームでもしよか?」
忍足はいい事を思いついた、といった表情で続ける。
「ここで俺らとダブルスの試合をして、そっちが勝ったら言うことを聞く。で、こっちが勝ったら…俺らのうち誰かとデートでもしてもらおか」