第10章 氷帝学園
日曜日、萌は以前桃城に教えてもらったテニスコートのある公園に来ていた。彼が言っていた通り、ここには付近の様々な学校の生徒達が集まってくる。地区予選で当たった不動峰の生徒とちゃんと知り合ったのもこの場所だった。桃城と来た時に偶然出会い、紹介されたのが決勝で対戦した橘杏であった。
それから度々この公園で会い、話をしているうちに萌達はすっかり意気投合し、こうして日曜日に会う約束をしていたのだった。
「あれっ、珍しい~、今日は誰もいないの?」
いつもは人が多過ぎて1面しかないコートに交替で入って打っているのに、今日は萌達だけだった。今がチャンスと二人でコートに入り、しばらくラリーを楽しんだ。ひとしきり打って休憩をいれる。ジュースを買ってきてベンチに並んで座り、女の子同士の雑談を始めた。
「どう?最近ペアの調子」
やはり一番気になるのはテニスの話題で、杏はそう尋ねてきた。
「うーん…まあ、自分では良くなってきてると思ってるの」
「うんうん、不二さんだったらきっとやりやすいよね。限りなくこっちに合わせてくれそうだし」
「そうなの。それは問題ないんだけど」
「…けど?何?なーんかあったな?」
萌は学校では誰にも言えない胸の内を杏に話したくなっていた。
「…『好きだ』って言われたの」
「…え?不二さんに?」
「そう」
杏は固まってしばし沈黙したが、次の瞬間思いきり反応してくる。
「う…っそお~~告白されたの!?あの天才不二周助に!?」
「杏ちゃんてば、しーっ、声大きいよお」
「やだ~~萌ってばやるじゃない!ね、どうやっておとしたの?」
「おとしたとかじゃなくて…困ってるの」
「ええーなんで?テニスは上手いし優しいし、何よりカッコいい!いいじゃんいっちゃえ!だってそれ、みんなうらやましい~ってやつでしょ」
そこで萌はふと背後から足音が聞こえた気がして振り返り、その光景に呆然と固まった。杏もようやく気付いて同様に愕然としフリーズ状態となる。
「よう杏ちゃん、久しぶりじゃねーの。やっと会えたな」