第9章 告白
あれ?菊丸先輩…
そこへ桃城が現れて萌に声を掛けてきた。
「大丈夫かぁ?夢野…おっと、オレはお邪魔かな」
萌と不二の急接近場面にひやかしを入れる桃城。それに比べて菊丸の態度はどこか変だった気がする。そうだ、こんな時真っ先に冗談でひやかしたりするのはいつも菊丸だったはず。
瑠羽がいないせいもあってダブルスの練習はなく、シングルスの練習試合を見て部活を終える。まだ痛い足をぶつけないよう慎重に着替えて萌が部室を出ると、大石や河村が来て怪我の心配をしてくれた。
「足は平気なのか?ひねったりしてないか?」
「…って、まあ、俺達が心配しなくても大丈夫かな」
河村は部室から不二が出てくるのに気付いてニコッと笑った。そそくさと去ってしまう彼らを萌は言葉もなく見送る。
「夢野、一緒に帰らない?」
優しく微笑む不二を断る勇気はまだ萌にはなかった。
皆は自分達のことをどういう風に思っているのだろうか?確かによく一緒に帰ったりしているがそれは自主練に行くためである。けれど周りには言い訳程度にしか聞こえていないのではないか、と不安になった。
萌の歩きが遅いことに気付いて不二が冗談めいて言う。
「おんぶしていってあげようか?」
「駄目です、そんなに軽くないですよあたし」
「あはは、君をおんぶするくらいの力はあるのになあ」
楽しそうに笑う不二を横目で見やり萌は尋ねた。
「…今日、瑠羽先輩どうしたんでしょうか?具合が悪いんですか?」
いっそのこと不二に聞いてみようと思い立ったが、口をついて出たのは全然別の内容だった。
「学校には来てたみたいだけど、ちょっと体調崩したのかもね。…僕に聞くより手塚や大石に聞いたほうが分かると思うよ。休みの理由、連絡してるだろうから」
「あ…そうですよね」
「なんで僕に聞いたの?」
そう切り返されるとは思っていなかった。萌は動揺した。
「…不二先輩と瑠羽先輩、仲良いから」