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sweet and sour time

第9章 告白


 地区大会が終わって数日が経った。都大会へ向けて部内も張り切っている。
 あれ?瑠羽先輩来てない。今日お休みなのかな?
 コート内を見回し仕方なくひとりでアップを始めようとする萌の元へ、不二がにこにこしながらやって来た。この間の彼の台詞が思い出されて、このところ正面から彼を見ることが出来ないでいる。

「アップの相手いないならつき合うよ」

 しかし不二は普段の様子と全く変わらなかった。気にし過ぎなのかもしれない。萌は練習に集中するよう努めた。
 合同練習が始まる。一人10球ずつのテンポの速い練習の最中、萌は気合いが空回りしたのかつまづいて思いきり派手に転んでしまった。コート内は一瞬静まり返る。が、大石がすぐに心配そうに寄って来た。

「大丈夫か!?夢野」
「おいおい、へーきかよ?びっくりしたぜ」

 桃城もコートに入って来て萌に手を貸してくれる。

「夢野、次の者と交替しろ」

 まだ途中だったが手塚の指示によりあがる萌。強く膝をぶつけたようで血が垂れてきていた。

「桃、次お前の番だろう?僕が夢野を看るから戻っていいよ」

 そこへ不二がすっとやって来て桃城の代わりに肩を貸してくれた。

「ずいぶん派手に転んだね」

 クスッと笑って不二はそのまま萌を水飲み場まで連れて行く。救急箱を持ってくると、片膝をついてしゃがみ込みてきぱきと手当てを始めた。

「先ぱい、大丈夫です、自分で…あたし」
「何言ってるの、痛くて足曲げられないくせに」

 不二にそこまでさせるなんて、と申し訳なさと恥ずかしさでおろおろする萌だったが、彼は手を止める気はないようだ。小さく笑って処置を続ける彼の優しい手つきに、何だか目を閉じてしまいたくなる。

「よし、終わり」

 お礼を言って息をつき顔を上げると、練習メニューを終えたメンバー達がコートを出て休憩を取る様子が映った。水飲み場付近でドリンクを飲んでいた菊丸に気付いた萌が目を向けたが、視線が合った次の瞬間彼はふっと違う方を向いて立ち去ってしまう。















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