• テキストサイズ

sweet and sour time

第9章 告白


 相手も予測しているだろう答えを、分かっていて言うしかなかった。すると不二はにっこりして口をひらく。

「それって嫉妬なの?だったら嬉しいんだけど」

 冗談のような本気のようなその言葉に胸が詰まる思いがした。彼の気持ちを聞くしか、この胸のもやもやは取り除けない。

「あ、あの…先輩は」
「僕はね、夢野のことが好きだよ」

 萌のあとに続いて不二が落ち着いた声で告げた。
 好意を持たれている気はしていた。けれどそこまではっきりと言われるとは夢にも思っていない。まさかの事態に萌は全身がほてっていくのをじんわりと感じていた。不二は相変わらずの笑みをたたえたままだ。

「…ごめん、唐突だったね」

 驚きで言葉も出ない萌に不二が少し真剣な顔で続けた。

「桃の言ってること、気になってた?気にしなくていいと思うよ。あいつはああいう奴だし、夢野に話し掛けたくて言ってるだけだから」
「え…?」
「後輩のことが気になるんだろう。面倒見のいい奴だからね」

 最近桃城がちょくちょくひやかしを入れてきていたのには、そういう理由があったからなのか。それは納得したが、正直萌は桃城達周りの反応どころではなくなってしまっていた。頭の中は真っ白だ。

「困らせちゃったか…ごめん、夢野。でも謝ったところで僕の気持ちは変わらないんだけどね」

 苦笑しながらも不二ははっきりと口にした。
 …この人に応えて、甘えてしまうのはきっと簡単だけど……
 ふと脳裏に菊丸の華麗なプレーやお茶目な笑顔が浮かんでくる。そして先程視線を逸らされた時の彼の顔も浮かび、胸がチクリと痛んだ。
 自分の気持ちを曲げたり、よく分からないまま受け入れたりすることはやっぱり出来ない。

「…謝らないでください。あの、あたし…嬉しかったです」

 萌は自分の素直な気持ちを込めてゆっくりと話し始める。
















/ 67ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp