第5章 休日
「はあっ!」
「まだまだ!」
合同練習のない日曜日、萌はリョーマの誘いで彼の家にあるコートで共に練習をしていた。
五月、青学テニス部の練習に追われる日々のなか、同じ一年でレギュラーになったリョーマとはだいぶ打ち解けて話せるようになっていた。彼の父は天才的プロテニスプレイヤーだった越前南次郎で、その父が今日は出掛けてしまうので相手を求めてリョーマは萌に声を掛けた、という訳だ。
「お前さ」
「ん?」
「なんで青学に入ったの?」
休憩中、リョーマがジュースを飲みながら聞いてくる。
「青学はテニスの名門校だし、何よりミクスド枠があったから」
「ふーん…最初から狙ってたんだ、ミクスド」
「そう」
「…スナオだね」
萌のぶっちゃけにリョーマはやや驚いたようだ。
「叔父がテニス連盟の役員なの。しかもミクスドの実行委員。今年から導入される新しい分野だし、狙ってみろって」
「ふーん、なるほどね」
「あたし、ずっとテニス続けていくつもりだし、ダブルスってあんまりやった事ないから色んな事試してみたいなって思ったの」
萌が自分の胸の内を語ると、リョーマはすくっと立ち上がった。
「…いいんじゃない、そういうの」
「え?」
「そういうやる気満々なのって、いいと思うけど」
こちらにちょっと笑い掛けるとリョーマはコート内へ戻っていく。
「夢野、もう一勝負しよう」
「うん!」
リョーマとの練習を終えたのは夕方で、書店などに寄り道をしていたら外はもう薄暗くなってしまった。足早に歩く萌の視界の先に、テニスバッグを持って公園から出てくる数人の学生が見えた。
「じゃーなー」
その中に、去って行く学生に手を振る桃城の姿を発見し萌はびっくりして声を掛ける。