第4章 ミクスド出場前祝い
菊丸がストレートに質問をぶつけてきたが不二は短く受け流し、微笑みながら萌に視線を寄こしてくる。
「さあ…どうだろうね?」
急に話を振られて驚く萌。どうして不二がそんな意味深長な態度を示すのか分からない。
「んー?何なに?なーんかあっやしいぞ~お」
身を乗り出して追求してくる菊丸に萌は慌てて説明した。
「練習です、不二先輩がコーチしてくれてるんで…」
「ほんとお?不二ぃ」
「ん…じゃ、そういう事にしとこうかな」
不二があやふやな返答をするので、せっかくの萌の説明も真実味を帯びない。
な…なんで不二先輩、そんなに曖昧なの?
「…周に教えてもらえば上手くなるんじゃない?良かったね、夢野さん」
そんな瑠羽の言葉にどことなくぎこちなさを感じてしまう。
料理が運ばれてきて食べ始める一同。話題は瑠羽が学校の授業のことに移していた。
「いまいち説明不足っていうか、よく分からないの。周、あとで教えてよ」
「あれは公式さえ頭に入っていればあとは全部応用だよ」
甘え気味の瑠羽に対し、不二はどこか淡々としているように見える。難しい話をしている二人の横で、菊丸は夢中で箸を動かしおいしそうに食べていた。そんな彼の様子を見ていた萌はその可愛らしさに思わず微笑んだ。
「おいしいですか?」
「も~ハラ減っててさあ、いつもよりおいしく感じちゃうんだよね」
「菊丸先輩は授業余裕なんですか?」
「んん?ヨユーなワケないよお。でも、家に帰ればねーちゃん達にみてもらえるしー、休み時間に不二にちょこちょこ教わってるし」
「菊丸君はいいよねー、周と同じクラスだから」
横から瑠羽が羨むように呟いた。もしかしたら瑠羽は不二のことが好きなのか?そんな疑問が彼女の言葉を聞くたび浮かぶ。
食事を終えて外に出ると辺りは夕焼けに染まっていた。
「不二達はこれからお出かけ?」
菊丸にそう振られても動じずに不二はニコニコして答える。
「うん。そのつもり」
「うん、って先パイ…お出かけじゃなくて練習です」