第120章 記憶の欠片<参>
「小鉄!!」
「小鉄君!!」
二人は小鉄を探して木々をかき分けながら進んだ。
幸い小鉄はすぐに見つかった。だが、その傍らには無残な姿にされた人形が静かに倒れ伏していた。
呆然と立ち尽くす小鉄の背中を、汐と炭治郎は沈痛な面持ちで見つめていた。
いつの間にか空には暗雲が陰り、零れ落ちてきた雨粒はまるで小鉄の涙のようだった。
「小鉄くん」
炭治郎はそっと小鉄の背中に手を置きながら言った。
「確認しよう。まだ動くかどうか」
「そうね。もしかしたら、動力部までは損傷が及んでないかもしれない」
二人の温かな言葉に、小鉄は顔を上げた。二人の顔は真剣そのもので、からかいの意思など微塵もなかった。
三人は倒れてしまった人形を起こし、あちこちを見て回った。しかしいくら見回っても、人形は動く気配がない。
やっぱり壊れてしまったんだろうと諦めていたその時、汐は人形の腰のあたりに奇妙な突き出しがあるのを見つけた。
(何かしら、これ)
汐はそのままその突き出しを押し込めた、その時だった。
ギリギリという音が聞こえたかと思うと、人形はそのまま首を上げ、五本の腕を横に構えた。
それはまるで、自分はまだ戦えるという、人形の声のようだった。
「動いた!!動いたわ!」
「やったね小鉄君!よかった!!」
二人はまるで子供のように手を取り合い、飛び上がって喜んだ。だが、互いの顔を認識すると、二人は顔を真っ赤にして慌てて離れた。
「そうですね、炭治郎さん、汐さん。これで修行して――、あの澄ました顔の糞ガキよりも絶対に強くなってくださいね・・・!!!全力で協力しますので・・・!!!」
そう言って振り返った小鉄の言葉は、決意と闘志、そして怒りに満ちていた。
それを見た二人の背中に、じっとりと冷たい汗が伝った。