第120章 記憶の欠片<参>
「さあ、そうと決まれば早速――「ごめん、ちょっと待ってくれないか?」
炭治郎は小鉄の言葉を遮った。
「まず汐を部屋に帰したいんだ。いいかな?」
「ちょっと炭治郎?何を言ってるのよ」
怪訝な顔をする汐に、炭治郎は顔を見て言った。
「さっき具合が悪くなっただろう?今日はもう休んだ方がいい」
「大丈夫だって。あたしは何ともないわ」
「いいや、駄目だ。今も少しだけど顔色がよくない。時透君に叩かれたこともあるし、大事を取った方がいい」
炭治郎の透き通った"目"が汐を見据え、汐は観念したように息を吐いた。
「わかった、あんたの言う通りにするわ。心配してくれてありがとう」
汐は少し頬を染めながら礼を言うと、炭治郎の頬も桃色に染まった。
それを見ていた小鉄は、何かを察したように手を顎に当てた。
「ははーん。成程ねぇ。そういう事ですか」
「え?な、なにが?」
「お二人はそういう関係ですか。ふーん、へーえ。炭治郎さんもやりますねぇ」
小鉄は面の下でにやけながら、二人の周りをくるくると回った。
炭治郎はきょとんとし、汐は俯いたまま身体を震わせた。
かとおもうと、次の瞬間には小鉄の身体は宙を舞っていた。
「何を言い出すのよ!このクソガキィィィ!!!」
怒り狂った汐の絶叫が、林中に木霊するのだった。