第120章 記憶の欠片<参>
「自分にできなくても、必ず他の誰かが引き継いでくれる。次に繋ぐための努力をしなきゃならない。君にできなくても、君の子供や孫ならできるかもしれないだろう?」
炭治郎の言葉に、小鉄ははっとしたように顔を上げた。
「俺は鬼舞辻無惨を倒したいと思ってる。鬼になった妹を助けたいと思っている。けれど、志半ばで死ぬかもしれない」
――でも、必ず誰かがやり遂げてくれると信じている。
「俺たちが繋いでもらった命で上弦の鬼を倒したように、俺たちが繋いだ命がいつか鬼舞辻無惨を倒してくれるはずだから」
「そうね。それに、あんたが駄目な奴だって誰が言ったの?自分で勝手に思ってるだけじゃない。あたしの専属の鍛冶師だって受け継いできた想いを無駄にしない為に、必死で頑張ってる。だからあんたも死ぬ気で頑張ってみなさいよ。諦めるのはその後でいいじゃない」
汐はそう言ってにっこりと笑い、それにつられて炭治郎も笑った。
「だから一緒にがんばろう!俺も汐も、諦めないから!」
炭治郎はそう言って小鉄の手を固く握った。すると小鉄は、涙をぼろぼろとこぼしながら頷いた。
「俺、人形が壊れるの見たくなかったけど、決心つけるよ。戦闘訓練は夜までかかるはずだから、心の準備して見届ける。ちゃんと・・・」
小鉄はしっかりとした声でそう言うと、炭治郎と汐は互いに顔を見合わせて笑いあった。