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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第120章 記憶の欠片<参>


小鉄が駆け込んだのは、木々が立ち並ぶ林の中。炭治郎は小鉄の匂いを辿って進み、その後ろを汐が追いかけた。

「小鉄君!」

炭治郎がある一本の木の前で止まり、その顔を上に向けた。
そこには枝に上り、幹にしがみ付いている小鉄の姿があった。

「全力で登っているなあ、小鉄君」
「何感心してんのよ!っていうかそこじゃないでしょ!!」

汐は炭治郎を押しのけると、木の上にいる小鉄に言葉を投げつけた。

「そんなところにいないで降りてきなさいよ。いじけても何の解決にもならないわよ!」

汐がそう言っても、小鉄は背を向けるだけで何も言わない。

「俺にできることがあれば手伝うよ。人形の事。諦めちゃ駄目だ」

炭治郎も負けじと、小鉄に向かって声を掛けた。

「聞いてくれ、小鉄君。君には未来がある」

炭治郎は真っ直ぐに小鉄の背中を見据えながら、凛とした声で言った。

「十年後二十年後の自分のためにも今、頑張らないと。今できないことも、いつかできるようになるから」
「・・・ならないよ」

木の上から、小鉄のか細い声が降ってきた。

「自分で自分が駄目な奴だってわかるもん。俺の代で・・・、俺のせいで全部終わりだよ・・・」

小鉄は面を押し上げ、零れだす涙をぬぐいながらそう言った。だが、顔を上げれば目の前に炭治郎の顔があり、次の瞬間には弾かれた炭治郎の中指が、小鉄の下あごに命中した。

「投げやりになってはいけない。自分の事をそんな風に言わないでほしいですわ・・・」

炭治郎は小鉄の眼前に右腕だけでぶら下がりながらそう言った。

「ちょっと炭治郎。あんた寝すぎて性格変わった?そんな喋り方だったっけ?」

背後から声が聞こえて振り返れば、隣の木の枝から逆さまにぶら下がる汐と視線が合った。

音もなく接近してきた二人に、小鉄は改めて鬼殺の剣士のすごさを感じた。
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