第120章 記憶の欠片<参>
「時透君の事かい?」
一方炭治郎はその高圧的な態度を咎めることもなく、本当に驚いたように言った。
「日の呼吸に"始まりの呼吸"の・・・、あの子はそんなにすごい人なのか・・・、ん?」
炭治郎はふと思いついたことを、そのまま口にした。
「でも使うの、日の呼吸じゃないんだね」
この言葉を聞いた瞬間、鴉は目くじらを立てて炭治郎の頬に喰いついた。
「黙ンナサイヨ!!目ン玉ホジクルワヨ!!」
「ア゛ーーーーッ!!」
炭治郎の悲鳴が響き渡り、汐は慌てて鴉を引きはがしにかかった。
「ハッ!!」
炭治郎は痛みのせいか、何かを思い出したように目を見開いた。
「思い出した、夢だ!!俺、あの人を夢で見た!!」
「夢・・・?」
汐がそういうと、鴉はその嘴を放し嘲るように言った。
「ハァァ?馬ッ鹿ジャナイノアンタ。コノ里ニ来タコトアンノ?非現実的スギテ笑エルワ」
その態度に汐は苛立ちを抑えられず、顔を歪ませた。
「ちょっとあんた!炭治郎が嘘ついてるっていうの!?」
汐が詰め寄ると、鴉は更に小ばかにしたように笑った。
「ダッテヨク考エテ見ナサイヨ。戦国時代ノ武士ト知リ合イナワケ?一体何歳ヨ?」
炭治郎は言い返すこともできず、なんとも言えない表情になった。
「なんかごめん。俺、おかしいよね?」
「おかしいわけないでしょ!?あたしだってあの顔見覚えがあるんだもの。あんたがおかしいなら、あたしだって相当おかしいわよ」
汐がそういうと、少年が後ろから慌てた様子で口を挟んだ。
「それって記憶の遺伝じゃないですか?」
「「記憶の遺伝?」」
二人が同時に聞き返すと、少年は頷いて言った。