第120章 記憶の欠片<参>
「戦国って確か三百年以上前よね。そんな長い間動いてたの?」
「はい。すごい技術なので今の俺たちでも追いつかないんです。だから、壊れてしまったらもう直せない・・・」
少年は人形と渡り合う無一郎を眺めながら、悲しそうに言った。
「俺の親父が急に死んじゃって、兄弟もいない。俺がちゃんとやらなきゃいけないのに、刀にも絡繰りにも才能がないから・・・」
少年は今にも泣きそうに声を震わせ、炭治郎も悲しそうに眉根を寄せた。
それから三人は、まるで踊っているかのように刀を振るう無一郎を呆然と見ていた。
「あの人、凄いなぁ・・・」
少年の口から、ぽろりと言葉が零れた。
「俺とそんなに年も違わないのに柱で・・・、才能もあって・・・」
「ソリャア当然ヨ!」
突如、斬り裂くような甲高い声が響き渡った。
「アノ子ハ"日ノ呼吸"ノ使イ手ノ子孫ダカラネ!」
視線を動かせば、炭治郎の足元で一羽の鴉が得意げに嘴を鳴らしていた。
「鎹鴉?」
汐のでも炭治郎のでもない鎹鴉は、まつげのある目を瞬かせながら言い放った。
「アノ子ハ天才ナノヨ!!アンタ達トハ次元ガ違ウノヨ。ホホホホ!!」
その口ぶりからするに、無一郎の鎹鴉なのだろう。
そう言って高笑いをする鴉に、汐は何だか腹立たしくなってきた。
すると、
「ソウデスネェ~。確カニアノ方ハ、素晴ラシイ才能ヲオ持チノ様デス~」
いつの間にか汐の肩にソラノタユウが止まり、間延びした声で鳴いた。
「ソウデショソウデショ!?」
「デモ~、ソレハ彼スゴイノデアッテ、アナタガ素晴ラシイワケデハアリマセンヨネェ~」
タユウのその言葉に、その場の空気が凍り付いた。
「ナッ、ナンデスッテェ!?ドウイウ意味ヨ!?」
「ソノママノ意味デスヨ~。ワカリマセンカ~?」
タユウの言葉に鴉は憤慨し、甲高い声を上げた。
「あ~もう、やめなさい。まあ、ちょっとすっきりしたけど」
二匹をなだめつつ本音を漏らす汐に、少年は面の下で苦笑いを浮かべた。