第119章 記憶の欠片<弐>
無一郎は意味が分からないと言った表情で二人を見ていたが、ふと炭治郎の背負っている箱を見て首を傾げた。
「ん?その箱、変な感じがする」
おかしな二人のせいで先ほどは気にならなかったのだが、その箱からは微かに鬼の気配がするのを無一郎は感じた。
「鬼の気配かな?何が入ってるの、それ・・・」
無一郎が手を伸ばした瞬間、炭治郎は、「触るな」と鋭く言ってその手を払いのけた。
その隙を突き、汐は反対側の手に掴まれていた少年を救出した。
「あんた大丈夫?しっかりして!」
汐はせき込む少年の背中をさすり、無一郎は彼を取られたことを認識して目を瞬かせた。
「は、はなせよ!」
だが、少年は汐を突き飛ばすように離れると、震える声でそう言った。
「無理に動かないの。あんた膝が震えているわよ?」
「あっちいけー!!」
汐を拒絶しながらも、少年は無一郎を睨みつけながら言った。
「だ、だっ、誰にも鍵は渡さない。拷問されたって絶対に」
既に身体は震え、立っているのもやっとのはずなのに、少年は絞り出すように言った。
「"あれ"はもう次で壊れる!!」
「拷問の訓練、受けてるの?」
それに対して無一郎は、淡々と言葉を紡いだ。
「大人だって耐えられないのに、君は無理だよ。度を越えて頭が悪いみたいだね」
無一郎は無機質な"目"を少年に向けながら、さも当たり前と言ったように言った。
「壊れるから何?また作ったら?君がそうやってくだらないことをぐだぐだ言ってる間に、何人死ぬと思ってるわけ?」
その言葉には情けなど一切ない、純粋且つ冷徹さが滲んでいた。
「柱の邪魔をするっていうのはそういうことだよ」
汐と炭治郎は目を見開き、表情を固まらせたまま無一郎を見た。