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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第118章 記憶の欠片<壱>


「ですが、玄海殿には私も随分とよくしていただきました。私が女であることも、あの方は存じていたのでしょう。私が初めてあの方と出会った時、私の頭をなでて、『男も女も関係ねえ。お前にはお前にしかできないことがある』と励ましてくださったのです」
「そうだったの。おやっさん、あたしが知らないだけで結構顔が広かったのね」
「ある意味、あの方は有名でしたから。でも、何度刀を壊されても、師匠は決して玄海殿の刀を打つのをやめなかった。それはきっとあの方がとても素晴らしい方であるということを、師匠は知っていたのでしょう。それは貴女を見ても、よくわかります」

鉄火場にそう言われ、汐の頬が淡く染まった。が、汐はふとある事を思い出して言った。

「あ、そうだ、鉄火場さん。あたし前にこんなものを海の底で見つけたんだけど、ちょっと見てくれない?」

汐はそう言って、あの時故郷の海底で見つけた、錆びついた懐剣を取り出した。

鉄火場はそれを見るなり、面の下で表情を強張らせた。

「これはまた、ずいぶんと錆びついていますね・・・」
「あたしの故郷だった場所で見つけたものなの。大した値打ちものとかじゃないかもしれないけれど、あたしの故郷にあった物だから、あたしにとっては十分に価値のあるものだから・・・」

汐は愛おしいものを見るような目で、錆びついた懐剣を見つめていた。

そんな彼女を見て、鉄火場は何とかしてやりたいという気持ちになったが、これほど酷く錆びついてしまっては、研ぐのも非常に難しいだろうと思った。
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