第116章 刀鍛冶の里<参>
部屋へ向かう道のりを、炭治郎と汐は目を逸らしながら、少し距離を開けて歩いていた。
いろいろなことが起こりすぎて、二人の頭が付いていかないのだ。
やがて二人が居心地の悪い沈黙に包まれたまま、部屋のある石畳の階段を上ろうとしたときだった。
「しおちゃあああああん!!!」
階段の上から聞き覚えのありすぎる声が降ってきて、汐と炭治郎が顔を上げれば、そこには汐曰く【凶悪な物】をこれでもかと揺らしながら駆けてくる、甘露寺蜜璃の姿があった。
「あーーっ!!炭治郎君もいる!!炭治郎くーん!!」
その姿に炭治郎は一瞬固まるが、慌てて口を開いた。
「あっ、気を付けてください!!乳房がこぼれ出そうでっ!!?」
だが、炭治郎が言い終わる前に汐の肘が鳩尾にさく裂し、そのまま炭治郎は膝をついて悶絶した。
「どうしたのよみっちゃん。そんなに泣き喚いて・・・」
「聞いてよしおちゃん!!私さっき無視されたの―!!挨拶したのに無視されたの―!!」
甘露寺は泣きじゃくりながら、手足をバタバタと駄々っ子の様に振り回していた。
「ちょっとしっかりしてよ。いい年した大人がみっともないわね。しかもあんた柱でしょ?もう少ししゃきっとしてよ」
「酷い!酷いわしおちゃん!さっきも知らない男の子に無視されて落ち込んでたのに、追い打ちをかけるなんてあんまりよぉー!!」
再びバタバタと暴れ出す甘露寺に、汐は呆れつつも何があったのか尋ねた。