第116章 刀鍛冶の里<参>
だが、そこまで言いかけた瞬間。突然何かが水の中に落ちるような音が響き渡り、禰豆子が慌てた様子で唸っていた。
汐は慌てて岩の奥を覗き込むと、そこには全身を茹蛸の様に真っ赤にして、湯の中にうつ伏せに浮かぶ炭治郎の姿があった。
「ええええーーーっ!!??あんた何やってんのーーーッ!?」
慌ててひっくり返せば、炭治郎は真っ赤になりながら目を回しており、言葉も呂律が回っていなかった。
「何逆上せるまで湯に浸かってんのよ!って、あたしのせいか。禰豆子!あんたの兄ちゃんを引っ張り出すから手伝って!」
禰豆子は頷くと、炭治郎の右腕を抱え、汐は手ぬぐいで前を隠しながら、左腕を抱えて立ち上がった。
炭治郎を二人で引きずる際、彼が使っていた手ぬぐいが、温泉の縁に引っ掛かって落ちたが、汐はそれを見ない様に視線を上に向けながら、炭治郎を脱衣所まで連れて行った。
その後、汐は里の者を呼び、炭治郎の着替えを彼らと禰豆子に任せると、自分は水分と身体を冷やす氷嚢を借りて彼の介抱をするのだった。