第116章 刀鍛冶の里<参>
(炭治郎・・・)
汐は炭治郎の優しさをかみしめつつも、胸が締め付けられた。汐の失態を欠片も責めず、それどころか自分を責めてしまう。
優しい人ほど傷つきやすいと、昔誰かに聞いたことがあったが、これではあまりにもあんまりだ。
「あんたが謝ることじゃないわ。ちゃんと話さずに、いきなり手を上げたあたしもいけないのよ。いろいろな人から「それはいけないことだ」って指摘されているのに、ちっとも改善しない。あたしってホントダメ人間だわ」
「そんなことはない。確かにいきなり暴力を振るうのは好ましくないけれど、汐はちゃんと分別もできているし、理不尽に人を殴ったりは絶対にしないことを、俺は知ってる。いきなりできなくても、少しずつ改善していけばいい」
炭治郎の言葉が湯煙と共に、汐の耳に優しく届いた。汐はとくとくと脈打つ胸を抑えながら、甘い痺れを感じていた。
(炭治郎・・・、あんたって人は、どうしてそんな言葉がすぐに出てくるの。どうしてあたしの欲しい言葉を、あんたはくれるの)
こみ上げてくる熱い想いが堰を切ってあふれ出しそうになり、汐は思わず声を上げた。
「炭治郎!あ、あたし、あたしね!この際言っちゃうけど、あんたが責任を取ってくれるって言ってくれた時、その、本当は嫌じゃなかった。むしろ、嬉しかった。だってあたし、あんたのことが・・・!」