第15章 幕間その弐
「手紙にはそれだけが記されており、それ以降奴の足取りは全く分からなかった。それから次に奴の手紙が届いたのは・・・」
「俺がこの狭霧山にきて半年たった、あの日ですね」
炭治郎の言葉に、鱗滝は深くうなずいた。
「儂はあの日のことをずっと悔やんでいた。何故、あの時奴を無理にでも引き止めなかったのか。もしそうならば。奴はまだ柱として儂とともにいたのかもしれん、と。だが、時を巻いて戻す術はない。すべてはもう、終わってしまったことだ」
「終わりじゃない」
そんな鱗滝の言葉を、汐が鋭く遮る。
「勝手に終わらせてもらっちゃ困るわ。あたしはまだ、おやっさんの無念を晴らしてないし、おやっさんはもともと自分勝手なところがある人よ。鱗滝さんが悪いんじゃない。だから、そんなことを言わないで。きっとおやっさんだって、そんなことを鱗滝さんに言って欲しくなんてないはずよ」
汐は凛とした表情で鱗滝を見据える。鋭く、そして澄んだ目が彼を射抜き昔の記憶をよみがえらせる。
――勝手に終わらせるんじゃねえよ、左近次。お前が悪いんじゃねえ。二度とそんなふざけたことを言うんじゃねえぞ。
(お前も、玄海と同じことを言うのだな。さすがは、奴の娘だけのことはある)
その表情が彼としっかり重なり、面の下で鱗滝は満足そうに笑みを浮かべた。
そうだ、終わりなどではない。奴の遺志はしっかりと目の前の少女に受け継がれている。
炭治郎に然り、汐に然り、禰豆子に然り。彼らにはきっと成し遂げられる力がある。
そう、信じていたかった。