第15章 幕間その弐
「確かに、奴の人間性には大きな難がある。だが、その実力は本物だった。現に、奴は鬼殺隊の中でも最高位である【柱】の役職についていたからな」
「「柱??」」
鱗滝の話だと、鬼殺隊には階級があり、その中でも一番高い称号が柱と呼ばれているとのこと。かつて鱗滝もその地位につき、玄海とともに多くの鬼を狩ったといった。
その話を聞いているうちに、汐の中で一つの疑問が沸き上がる。それは、最終選別で戦った鬼が口にしていた【大海原が行方知れずになった】という話だ。
「ねえ鱗滝さん。あたし、試験中に鬼から聞いたんだけど。おやっさんが行方不明になったってどういうこと?」
この問いかけに、鱗滝の肩が小さくはねるのを汐は見逃さなかった。鱗滝は、確実にそのことを知っている。
「・・・実は、奴が、玄海が柱であった期間は、僅かひと月だったのだ」
「え?たったのひと月?」
「ああ。あの日、儂と奴で試験用の鬼を捕らえていた時のこと。玄海に勅命、緊急の任務が入り奴はそのまま向かった。儂が生きている玄海と会ったのは、それが最後だった」
鱗滝は顔を少しばかり伏せた。それはまるで、あの日のことを後悔しているようだった。
「その後はしばらく音信不通だったのだが、ある日。奴の鎹鴉から手紙が届いた。そこにはこう書いてあった」
――左近次。俺は柱を降りる。いや、鬼殺の剣士をやめる。俺の守るべきものは、そこでじゃ守れねえ