第115章 刀鍛冶の里<弐>
この里は刀鍛冶師やその家族の住まう集落があり、殆どの鍛冶師が自分の工房を持ち、そこで皆鬼を倒すための日輪刀を打っているという。
鬼殺隊士にとって命を守るとともに、自分自身の魂といっても過言ではない日輪刀。
それを二度も壊してしまった事により、流石の汐も負い目を感じていた。
(鋼鐵塚さんが見つかれば鉄火場さんもやる気になるって里長さんは言ってたけど、鋼鐵塚さんを捜すのは無理だろうし、とりあえず鉄火場さんから話だけでも聞けないかな)
汐は、あちこちを見回しながら先へと進んだ。
あちこちに温泉があるせいなのか、硫黄の匂いが汐の鼻を掠めていき、少しだけ顔をしかめた。
狭霧山でも小さな温泉はあったため、その匂いの存在は知っていた汐だったが、それでもこの匂いはあまり好きになれなかった。
(あたしでさえこんな風なんだから、鼻が利く炭治郎はもっときついんじゃないかしら)
炭治郎の顔を思い出した瞬間、汐の胸が小さく音を立てた。
(そう言えば、あの日以来炭治郎と全然会ってないわ。任務で数日開けてたし、帰ってきてからすぐにここに来ちゃったし。あ、でも!あの時の事は完全にあいつが悪いから、あたしが謝る必要なんてないわよね)
炭治郎の汐にとって無神経すぎる発言に容赦ない制裁を加えたことを、汐は無理やり納得させながら歩いていると、教えられた場所へとやってきた。