第115章 刀鍛冶の里<弐>
翌朝。いつもより早く目が覚めた汐は、隣で幸せそうな顔をして眠る甘露寺を起こさないように起き上がり、隊服に着替えてそっと宿舎を抜け出した。
朝の散歩ついでに、昨日こっそり教えてもらった鉄火場のいる工房に向かうためだ。
基本的に里の中の移動は自由であり、温泉も入り放題だという至れり尽くせりな対応に、汐は少し戸惑いつつも嬉しく思った。
(里長さん達は任せてくれって言ってたけれど、やっぱりあたしは鉄火場さんに刀を打ってもらいたい。今までだってあの人の打った刀で戦って来れたんだもの。今更他の人に変えるなんて、あたしはごめんだわ)
汐は少し肌寒い秋の空気を感じながら、工房への道を進んだ。
この里は刀鍛冶師やその家族の住まう集落があり、殆どの鍛冶師が自分の工房を持ち、そこで皆鬼を倒すための日輪刀を打っているという。
鬼殺隊士にとって命を守るとともに、自分自身の魂といっても過言ではない日輪刀。
それを二度も壊してしまった事により、流石の汐も負い目を感じていた。
(鋼鐵塚さんが見つかれば鉄火場さんもやる気になるって里長さんは言ってたけど、鋼鐵塚さんを捜すのは無理だろうし、とりあえず鉄火場さんから話だけでも聞けないかな)
汐は、あちこちを見回しながら先へと進んだ。