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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第114章 刀鍛冶の里<壱>


「しおちゃんは、私の力がすごく強いことは知ってるわよね?でもね、それは鍛えたからだけじゃないの。私の身体はね、普通の人とは違って筋肉の密度が八倍もあるらしいの」
「は、八倍!?」

飛び上がる汐をしり目に、甘露寺はさらに続けた。

「そのせいかはわからないけど、私ってたくさん食べるでしょ?しおちゃんはもう慣れただろうけど、普通の人が見たらみんなびっくりしちゃうから、この事はお見合いが破断した日から隠さなきゃって思ったの」

「お見合いが破談って、なんで?」

甘露寺の話では、桜餅の食べ過ぎで髪の色が変わってしまい、加えて彼女の特異体質のせいで二年前にお見合いが破談になってしまった事があった。

だから彼女は、それをひたすら隠した。神を黒く染め、食べたいものを我慢し、嘘をついて力が弱い振りをしていた。

「でもね、そうしているうちに、これが本当に正しいことなのかわからなくなったの。いっぱい食べるのも、力が強いのも、髪の毛も全部私なのに、私は私じゃない振りをするの?って。私が私のまま出来ることや、人の役に立てることもあるんじゃないかな?ありのままの私を好きになってくれる人はいないのかなって」

そう言って俯く甘露寺を、汐は呆然と見つめていた。初めて聞かされた、甘露寺蜜璃という人間の過去。

偽りの自分を演じながらも、心のどこかでそれを疑問に思う、矛盾した気持ち。他の者とは少し異なるものの、彼女も彼女なりに苦しんできたことを、汐は今初めて知った。
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