第113章 幕間その陸:故郷へ(後編)
それから二人が戻ってから数日後。汐の屋敷に尋ねてきたものがいた。
それは、【隠】という鬼殺隊の事後処理部隊の者だった。
「大海原汐さんですね?初めまして。お館様より許可が出ましたので、私がご案内します」
「はあ、どうも。大海原汐です」
きっちりした喋り方の隠に圧倒される汐に、隠は頭を下げると言った。
「案内役の事情で名乗ることはできませんが、よろしくお願いします。では、これを」
隠はそう言って汐に目隠しと耳栓を手渡した。
「里の場所は隠されているため、私があなたを背負っていきます。では、早速行きましょう」
汐は言われるがまま目隠しと耳栓をすると、隠の背中にそっと乗った。華奢な見た目とは裏腹に、隠は軽々と汐を背負って歩きだした。
汐が屋敷に戻る少し前、甘露寺から里の事は少しだけ聞かされていた。
鬼の襲撃を防ぐため、刀鍛冶の里は隠されており、隠の案内なしではたどり着けない。かといって、今汐を背負っている隠も場所は知らず、一定の距離まで運ぶと次の隠へ引き渡され、少しずつ案内されていくのだ。
更に、汐と甘露寺は別行動をとっていた。これも勿論、鬼の追跡から逃れるためだ。
それ程、鬼殺隊にとって刀鍛冶の里とは重要な生命線の一つであるのだ。