第113章 幕間その陸:故郷へ(後編)
どのぐらいの距離を歩き、何人の隠に引き渡されたか分からない頃。
「おい、着いたぞ」
突然、汐の目隠しが外され、耳栓を抜き取られた。急激に入ってきた光に目をくらませながら、汐は数回瞬きをし、眼前に広がる光景に、汐は大きく目を見開いた。
そこには、山を切り取ったような岩肌に、いくつかの建物が生えるように立っていた。
光景に圧倒されて呆然とする汐に、隠は小さく笑いながら言った。
「あんた、すっげえ間抜けな顔してるぜ。まあ、その気持ちはわからなくもないが。あっちの奥を曲がったところが、この里の長の家だから必ず挨拶に行けよ」
「ええ、わかったわ。ありがとうね」
汐はにっこりと笑いながら礼を言うと、隠は小さく飛び上がって顔を赤くした。
「お、おう。それじゃあな」
そう言って隠は慌てた様子で、その場から立ち去っていった。汐はその背中を見ながら、小さく手を振ったその時だった。
「しおちゃん!!」
背後から声がして、汐が振り返れば、そこには甘露寺が笑いながら駆け寄ってきた。
「みっちゃん!もうついてたんだ!」
「ええ、っていっても、私もほんのついさっきついたばかりなの。だからこれから、この里の長の鉄珍様にご挨拶に行くから、しおちゃんも一緒に行きましょう!」
余程汐と会えたことが嬉しいのか、甘露寺は汐の手を握って走り出した。はたから見れば姉妹のようにも見える光景に、一部の者たちは心が温かくなったという。
だが、二人はまだ知らなかった。
再び、大きな運命の流れに翻弄されることを・・・