第113章 幕間その陸:故郷へ(後編)
(深いとは思っていたけれど、流石に深すぎ・・・!)
いくら身体能力が大幅に上がったとはいえ、人間である以上息をしなければ生きることはできない。
しかも視界は闇に閉ざされ、下手をすれば方向が分からなくなってしまう状況だった。
(こんなところでくたばるなんて、冗談でも笑えないわ・・・!でも焦るな。焦ったら、状況はさらに悪化する。集中するのよ・・・!全神経を研ぎ澄ませ!)
汐はかっと目を見開き、身体に力を込めた瞬間。不思議なことが起こった。
汐の眼前に、突然青く光る道のようなものが現れたのだ。
それは真っ暗な闇を斬り裂き、ある場所に向かって伸びているようだった。
汐はまるでそれをはじめから知っていたかのように、不思議と疑問に思うことはなかった。
汐は誘われるように青い道をたどり、海の底へとさらに潜った。すると、道の先に何かを見つけ更に近づいた。
それは、五寸ほどの小さな棒状の物で、フジツボや藻などがびっしりと付着していたが、汐は何故かそれが目的の宝物であるということを理解していた。
(さて、戻らないと。でも、一気に浮上しては駄目。肺の中の空気が膨張して破裂する恐れがある)
汐は焦りを抑えながら、ゆっくりと少しずつ浮上していった。