第15章 幕間その弐
幻の柱
汐と炭治郎が選別試験から帰還した三日後の夜。
「ねえ、鱗滝さんに聞きたいことがあるんだけど」
夕餉を終え一息ついたころ、汐は唐突に鱗滝に尋ねた。彼が何事かと怪訝そうに尋ねると、汐は真剣な表情で口を開いた。
「鱗滝さんは昔おやっさんと一緒に鬼狩りをしていたんだよね?昔のおやっさんってどんな人だったの?」
汐の問いかけに鱗滝は少し迷ったように首を傾げた。だが、意を決したように彼女の顔を見る。
「そうだな。お前には話しておくべきだな」
そう言って鱗滝は座り直し、汐に向き合った。
その時、入浴を終えた炭治郎が小屋へ戻って来た。そして向き合っている二人を見て、慌てた様子で寄ってくる。
何事かと尋ねれば、汐が養父玄海のことを聞きたいと言ったので話すところだと鱗滝は答えた。
正直なところ、炭治郎も少しばかり興味があった。
鱗滝の友人でありともに戦った、汐の養父大海原玄海。一体どんな人物なんだろうか、と。
「炭治郎も聞きたい?おやっさんのこと」
「え?まあ、興味はあるけど、俺も聞いていいのか?」
「むしろなんでそんな質問が出るのよ。いいに決まってるじゃない。無関係なわけじゃないんだし」
汐に促され、炭治郎は彼女の隣に座る。鱗滝は二人を一瞥した後、静かに口を開いた。
「大海原玄海。奴を一言で言ってしまえば――」
――とんでもない男だ