第14章 二つの刃<肆>
「せっかく刀も届いたことだし、一度やってみたいと思ってね。炭治郎は知ってる?金打(きんちょう)って」
金打、という言葉を聞いて炭治郎を除いた三人の方がはねる。
「ほう。お前、ずいぶん渋いことを知っているのだな」
「あの、金打というのは?」
「約束を守るために、刀の刃と刃を打ち合わせることだよ。絶対に破れない誓いの証だって、昔おやっさんが言ってた」
約束、誓い。汐の言葉を聞いて、炭治郎の顔が引きしまる。自分たちがこれから行うことの意味を、改めて理解したからだ。
「ならばすぐに隊服に着替えろ。それから行えばいい」
二人はすぐさま隊服にそでを通した。真っ黒な布地に、背中には【滅】の文字が刻まれたもの。
きちんと採寸されていたためか、服は寸分の狂いもなく二人の体を包む。
この隊服は特別な繊維でできており、通気性がよくそれでいて濡れにくく燃えにくい。そして弱い鬼の爪や牙程度では引き裂くこともできない程の強度を持っている。
二人はその隊服の上から、それぞれの羽織を身にまとった。
炭治郎は緑と黒の市松模様。そして汐は、濃い青色に浮世絵の波のような文様が描かれたものだ。
更に、炭治郎と禰豆子の為に、鱗滝が贈り物をくれた。昼間、日の下に出ることができない禰豆子を背負うために作られた箱だ。
これは【霧雲杉】という、非常に軽くて硬い木でできており、さらに【岩漆】という特殊な塗料を塗ってあるため強度も上がっている。
二人がいつも共にいられるようにと、彼の心づかいの証だ。
そして二人は向き合い、互いの刀を抜くと、その刃をそっと合わせた。
澄んだ金属音が、刃を合わせたところから小さく響く。その音を聞き、二人は互いの眼をじっと見据えた。
(必ず生きて、また会おう!)
二人の固い誓いは、今この瞬間確かに立たれたのであった。