第112章 幕間その陸:故郷へ(中編)
――恋の呼吸――
――海の呼吸――
――結ノ型――
――狂乱恋風!!
二人の息の合った技が、鬼の攻撃を全て捌き、残った残骸ですら細切れにした。
止めを刺された鬼は、成す術もなく灰となって消えていった。
「ふぅ、やったわね、しおちゃん」
甘露寺は小さく息をつきながら、汐の背中に向かって声を掛けた。だが、汐は返事をせず、月明かりに照らされる鯨岩を見つめていた。
「あの、しおちゃん?」
返事をしない汐に、甘露寺は怪訝そうな顔で声を掛けた、その時だった。
突然汐の身体がぐらりと傾き、そのまま吸い込まれるように倒れてしまった。
「しおちゃん!!」
甘露寺は慌てて汐の身体を支えると、そのまま抱えて足早にその場所を後にした。
月明かりが、誰もいなくなった入り江を静かに照らしていた。