第112章 幕間その陸:故郷へ(中編)
「行って、しおちゃん!!」
甘露寺が叫ぶと同時に、汐は目にもとまらぬ速さで岩場を駆け抜けた。
鬼の触手と鱗が汐を追おうとするが、甘露寺がその前に立ちふさがった。
「させないわ!!」
――恋の呼吸・伍ノ型――
――揺らめく恋情・乱れ爪!!
甘露寺は身をひるがえしながら、襲い来る攻撃をすべて叩き切り、そのまま刃を鬼の胴体に巻き付けて一気に切り裂いた。
「しおちゃん、今よ!!」
甘露寺の言葉を合図に、鯨岩に飛び乗った汐は、鬼の頸めがけて刀を振り下ろした。
しかし、鱗に隠れていたフジツボが、再び汐の斬撃を阻んだ。
だが、
「ああああああああああ!!!」
汐が雄たけびを上げると、汐の刀が激しく振動し、その勢いでフジツボごと鬼の頸を斬り落とした。
「ギャアアアアア!!!」
断末魔を上げながら鬼の身体はのたうち回り、あちこちを破壊し始めた。
その岩の断片と、残った鱗が最後のあがきで二人に向かって降り注いだ。
「みっちゃん!!」
「しおちゃん!!呼吸を合わせて!!」
汐は身体を捻って着地すると、甘露寺と共に大きく息を吸った。