第112章 幕間その陸:故郷へ(中編)
だが、
「くっ!」
汐の刀は、鬼の頸に覆われたフジツボに阻まれてしまい、そのせいか刀が僅かに欠けてしまった。
その隙を突き、鬼は鋭い爪の生えた手を汐に向かって振り下ろそうとした。
汐はそれを刀で受け止めるが、勢いまでは殺しきれずに、海に叩き落されてしまった。
「しおちゃん!!」
甘露寺が悲鳴を上げる中、鬼は再び彼女に向かって鱗を雨のように降らせてきた。
――参ノ型――
――恋猫しぐれ!!
甘露寺は、まるで猫の様に跳びはねると、降り注ぐ鱗ごと全ての攻撃を斬り裂いた。そしてそのまま、鬼の頸を取ろうと向かったその時だった。
下半身の口から真っ赤な炎が飛び出し、甘露寺の進路を阻んだ。
(熱い!!)
甘露寺が顔面を崩して怯んだ時、時間差で飛んできた一枚の鱗が、その左手を掠めた。
痛みが走り、手の甲からは血がにじみ出した。
(この鬼、思ったより強いわ!十二鬼月ではないみたいだけど、たぶんそれに近い・・・。ああでも、それよりもしおちゃん!しおちゃんを捜さないと・・・!でも・・・!!)
汐が本調子ではないことには気づいていたが、彼女の頑なな態度に何も言うことができなかったことに、甘露寺は心の底から後悔した。
その一瞬の隙を突いて、鬼の下半身が甘露寺に伸ばされようとした、その時だった。