第112章 幕間その陸:故郷へ(中編)
(きゃー!こっちは目につくものを、何でも食べてしまうのね!目はないけれど!)
甘露寺は刀を抜くと、鮮やかな桃色の刀身が姿を現した。しかし、それは通常の刀の形状とは異なっていた。
彼女の使う日輪刀は、まるで鞭のように長く、布の様に薄かった。
それを初めて見た汐は、目を点にさせ、二度見どころか何度見をしたくらい、奇抜な刀だった。
「行くわよ!」
甘露寺は大きく息を吸うと、荒れ狂う下半身に向かって突っ込んでいった。
――恋の呼吸 壱ノ型――
――初恋のわななき!!
甘露寺の一太刀がうねる様に触手を捕らえ、瞬時にバラバラに斬り裂いた。その速さは、元忍びである宇髄をも上回るものだ。
鬼はその速さを見て、甘露寺が只者ではないことを察した。
だが、斬り裂かれは触手はすぐに再生し、そこに新たな口が現れた。
(きゃー、気持ち悪い!!)
甘露寺は顔を青ざめさせながら、増えた口に向かって刀を振るっていた、その時だった。
――ウタカタ 参ノ旋律――
――束縛歌!!!
死角から現れた汐が歌を奏で、鬼の身体を拘束し、そのまま汐は、頸めがけて刀を振り下ろした。