第112章 幕間その陸:故郷へ(中編)
上半身は大人の人間ほどの大きさだが、その身体は鱗に覆われ、耳のある位置にはひれが付いていた。
そして下半身には、人の胴体程のある六本の触手が生えており、そのいずれかにも目のない口があって、鋸のような歯が覗いていた。
「きゃあああ!!!」
そのあまりにも醜悪な姿に、甘露寺は思わず悲鳴を上げた。汐も、鬼の"目"を見て吐き気を覚えるが、それを打ち消すかのように殺意の炎が胸の中で燃えた。
「ほぉ・・・、これはこれは・・・。中々旨そうな女子供が迷い込んできおった」
鬼の口が弧を描き、血のような真っ赤な舌が飛び出した。
「漁師共の塩辛くて不味い肉に、そろそろ飽きてきたところだ。久々の御馳走、味わって食べるとしよう」
鬼はそう言うなり、上半身から光る鱗を二人に向かって飛ばしてきた。
汐は右に、甘露寺が左によけると、鱗は二人がいた場所にあった岩を、真っ二つに斬り裂いた。
(あんな固い岩を、パンケーキみたいに斬ってしまったわ!あんなのに当たったら、細切れになっちゃう!!)
甘露寺が顔をしかめたその時、鬼の下半身についている大きな口が、あたりの岩を噛み砕きながら迫ってきていた。