第112章 幕間その陸:故郷へ(中編)
「それで、鬼の居場所の目星はついているの?」
汐の隣を歩きながら、甘露寺は怪訝そうな顔でそう尋ねた。
「このあたりで鬼が隠れそうな場所って言ったら、あそこしかない。鯨岩っていう大きな岩がある入江。あそこは結構入り組んでいるし、前にも海賊共が根倉にしていたことがあったから。ほら、あそこに見える大岩がそうよ」
汐はそう言って、少し離れた位置にある大きな岩を指さした。
「わぁ、本当に大きな岩ね」
甘露寺は少しでも雰囲気を明るくしようと声を張り上げ、汐は小さくうなずきながら答えた。
「あの岩は遠くからでも目立つから、漁に出た漁師たちの目印にもなっていたの。あたしも随分、あの岩に助けられたわ」
汐はそんな話をしながら、鯨岩のある入り江へと足を進めると、やがて二人の前に大きな洞窟が姿を現した。
「鬼の気配がする・・・。どうやらここで当たりだったようね」
「ええ、気を付けましょう」
汐は目を鋭くさせながら、甘露寺と共に刀の柄に手をかけた。
すると、ずるずると重いものを引きずるような音が、洞窟の奥から響いてきた。
二人が刀を構えてから数秒後、鬼はその全容を現した。