第14章 二つの刃<肆>
「玄海の刀を打ったのは、こやつの師の【鉄火場仁鉄】だ。奴は刀をよく破損しては仁鉄にどやされていたな。それで、奴は息災か?」
その言葉を聞くと、鉄火場は首を横に振り「師匠は1年ほど前に亡くなりました」とだけ答えた。
その場が水を打ったように静かになる。鱗滝はそれを聞き「そうか・・・」と答えた。
「玄海殿がお亡くなりになられたことは存じております。そのせいでしょうか。師匠も後を追うように突然逝ってしまわれたのです。自分に全てを叩き込んでから」
ですから、と。鉄火場は汐のほうに顔を向けていった。
「玄海殿のご息女であり弟子である貴女に刀を打てたことを、自分は誇りに思います。どうか、どうかその刀を、大事にしてやってくださいませ」
そう言って鉄火場は汐に深々と頭を下げた。汐も「大切に使いますね」と答え頭を下げた。
と、その時だった。
「カァ!カァ!竈門炭治郎ォ!北西ノ町ヘ向カエ!!」
炭治郎の鎹鴉がけたたましく鳴き、炭治郎に怒鳴りつけた。
「カァ~カァ~。オ仕事デスヨォ~。|大海原《わだのはら》汐。貴女ハ南東ノ町へ行ッテクダサイネェ~」
一方汐の鎹鴉は、間延びした声で羽をはばたかせる。
「どうやら二人の初任務のようだな。だが、方向が違うということは」
「別の場所での任務ってことね」
「じゃあしばらくお別れってことか・・・」
今までずっと共に戦ってきた炭治郎とのしばしの別れ。わかってはいたものの、いざその時が来ると汐は少し寂しさを感じた。
しかも、これから行うのは文字通り、命を懸けた危険な仕事。一歩間違えれば死んでしまってもおかしくない。
ならば
「あ、ねえ。あたし一つやってみたいことがあるんだけど」
汐の突然の提案に、炭治郎をはじめ皆が何事かと首を傾げた。