第111章 幕間その陸:故郷へ(前編)
「お待ちしておりました、鬼狩り様」
藤の家につくと、すぐに家主らしき男が出迎えてくれた。
そんな彼に、甘露寺は礼を言うと、状況がどうなっているか尋ねた。
「鬼が出るというのは、この先の港町の近くで御座います。ここから少し先に、小さな港町があるのですが、最近はその付近に鬼が出てしまい、僅かながら被害が出ている模様です」
港町と聞いて、二人の肩が小さく跳ねた。特に汐は、心当たりがあると言わんばかりに、大きく目を見開いていた。
「ね、ねえ!その港町の近くに、その、漁村とかってあったりする?」
汐がたまらず身を乗り出して尋ねると、家主の男は驚いた顔をしながらも口を開いた。
「え、ええっと。話でしか聞いたことはありませんが、大規模な災害があって壊滅してしまった村があったと」
男の言葉に、汐の顔色がみるみるうちに変わっていった。それを見て、男は察したのか口を慌てて閉じた。
「も、申し訳ありません!私はなんてことを・・・」
「いいえ、あんたは悪くないわ。貴重な話を聞かせてくれて、ありがとう」
汐は引きつった笑顔でそう言うと、男は申し訳なさそうな顔をしながら部屋を後にした。