第111章 幕間その陸:故郷へ(前編)
「まったく、命かける危険な仕事なんだから、前情報くらいきちんとしてほしいわ!」
「その気持ちはわかるけれど、鬼の調査って本当に大変なのよ。言い方は悪いけれど、何かが起きてからじゃないと動けないことも多いの」
そう言う甘露寺の"目"には、微かに悲しみが宿っていた。
「ここで考えていても、始まらないわ。とりあえず、この先にある藤の花の家で情報を集めましょう」
「そうね。そうしましょう」
二人は互いに顔を見合わせると、同時にうなずいた。
そして藤の花の家に近づくにつれ、汐は周りの景色に奇妙な既視感を覚えていた。
(あれ?この道、何だか見覚えがあるような・・・)
しかし、その既視感の正体がわからないまま、汐達は藤の花の家につくのだった。