第111章 幕間その陸:故郷へ(前編)
「しおちゃんが復帰してから、初めての任務ね。だけど、浮かれてちゃ駄目よ。遊びに行くんじゃないんだからね」
「・・・あのさ、みっちゃん。すごくいいことを言っているつもりなんだろうけれど、その顔で言われても、説得力微塵もないからね。そっくりそのまま返すからね」
満面の笑みでそう言う甘露寺に、汐はため息をつきながらそう言った。
久しぶりの二人での任務であるせいか、甘露寺は危険な仕事に行くとは思えない程、ウキウキとした様子で荷造りをしていた。
気持ちはわからなくもないが、これではあまりにも威厳に欠けると、汐は思った。
「それにしても、いつもより荷物が多いわね。そんなに遠いの?」
「ええ。今回は数日掛けて行くくらい遠くだから、いろいろと念入りに準備しないと」
「数日!?相当遠いのね。そんな遠くに柱送るなんて、十二鬼月がいるのか、人手が足りないのか・・・」
どちらにしても、今こうしている間にも、鬼は人を襲い好き勝手に狼藉を繰り返しているだろう。
汐の"目"に闘志が宿り、手に力がこもった。
やがて荷造りを終えた二人は、甘露寺の屋敷の使用人と、汐の屋敷に派遣されている使用人に事情を話し、派遣先へと向かった。
流石に歩いていくのは遠すぎるため、時折乗り物にのりながら、二人は西の地を目指した。(汐は酔い止めの薬を、しっかりと飲んだ)
「ねえみっちゃん。あたし達が行くのって、どんなところ?」
汐が尋ねると、甘露寺は少し困ったように言った。
「西の方角とは聞いているけれど、詳しい場所までは何も」
「そう。相変わらず、大雑把な連絡よね、鎹鴉って」
汐は口を尖らせてぼやき、甘露寺も同意するようにうなずいた。